愛は惜しみなく与う⑥
あたしは弱い
あの世界で生きていく自信も気力もなかった。だから

鈴になることを決めた

全て丸く収まることを知っていたから


「ごめんな。みんなが優しいから甘えすぎたわ。自分を大事にできひん奴が、人のこと…大事になんてできひんかったわ。ごめん」


仲間想いとか
あたしに1番似合わへん言葉やな

薔薇の時も正体を隠してみんなと一緒にいた。それで結局スコーピオンの事件に巻き込んでしまった


泉達も…
自分で自分を蔑ろにしてるんや。
そんな奴…誰も救えへん



「鈴として生きるって決めた時、記憶も全部無くなったらよかった。あったかい気持ちなんて知らんかったらよかった。あの瞬間…自分を殺せたら楽やったのに」


なにもかも
知らずに死ねたらよかったな


でも泉は

そんなこと言うあたしでも

大事にしてくれるんやな



「俺は杏が生きててよかったよ。言っただろ?居場所を作ってやるって。もうできてんだ。あとは杏が決めるだけだよ。

もう一度言う。俺の手を取れ。守るから」


俺の手を取れ

泉に出会って最初に言われたこと
< 47 / 430 >

この作品をシェア

pagetop