愛は惜しみなく与う⑥

あの鍵をもってる。東堂のスーツを着ている。
それで充分らしい

はぁ

杏はどこだろう

そのまま言われるがまま、家の中を連れまわされたり、掃除したり、色々した


その中で


最初は違和感だったものが、確信に変わっていった



『今日はこの応接間を、鈴様と婚約者様が使用することになってる。掃除を隅々までしよう』

何やら教えてくれるおじさんにそう言われた。
ここでおかしいなって気づく


鈴様と婚約者?


おかしくないか?
だって、妹は死んだことになってるんだろ?

それなのに、ここにいる執事やメイド達は全員言うんだ


鈴様の、鈴様の、と

誰一人杏の名前を言わない

おかしい
何かがおかしい


そう思って、1人の女の人に聞いた。
他の人たちが無言でただただ仕事をこなす中、その女の人だけが、俺と同じように、鈴様と言う名前を聞くたびに、眉間にシワを寄せていた

もしかしたら

何か知ってるかもしれない


そう思って、休憩だと言われたときに声をかけた
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