愛は惜しみなく与う⑥
目の前の若い女は、首を傾げる

やってしまったと、女の人を見ると、目を大きく見開いて俺の顔をじっと見る





「あんた、重い荷物があるから少し手伝いな」

突然、女の人に手を引かれて荷物置き場のような部屋に連れて行かれる


何か怒られるのか?
部屋に入って女の人はドアの鍵を閉める。

いや、何されるんだ、俺

少し構えていたら、この屋敷に来て1番聴きたかった名前が女の人の口から飛び出た



「あんた、杏ちゃんのお友達かい?」



まさか
よかった。この人は杏を知ってる

でも、この人が信用できる人なのか分からないから、迂闊に話せない


「俺は…志木さんの代理で今日からここに来ただけです」

「あの!馬鹿息子!!!杏ちゃんを置いてどこ行ってんだい!!志木のやつ!次見つけたら引っ叩いてやる!!」


え?

目の前で持っていたホウキを折ってしまうんじゃないだろかというくらい、力を入れて、ホウキをガンガンと床に叩きつけて、怒っている女の人

いま、バカ息子って言った?



「あんた、いま志木の名前聞いて反応したね?知ってるんだろ?あの馬鹿息子!どこにいるの!」
< 65 / 430 >

この作品をシェア

pagetop