愛は惜しみなく与う⑥
その聞き方は失礼な気もして言葉を止めた


でも


「……あんた、ここに杏ちゃんがいるって思って来たんだね?」

「はい、そうです」

「…そうか。引越し先のお友達かな。杏ちゃんはね…ここに帰ってきてるよ」


よかった。いないのかと思った

でも違ったんだ



ここまで助けにきてくれるくらい、杏ちゃんを大事に思ってくれてるんだね。
なら、話しても大丈夫そうだね。そう言って、みのりさんは、ある話をした



「杏ちゃんはね、妹の鈴のフリをしてるんだよ。あの母親の為に…世界の東堂を守る為に…ほんと杏ちゃんもバカだよ」


みのりさんは、突然泣き出してしまった

それにしても
妹のフリ?



そこで俺は、志木さんのお母さんから全てを聞いた。

あの事件のとき何があったのか
杏がなんでそんな選択肢をしたのか

杏が死んで妹が生きている


そうみんな認識しているのか


そんなの



「杏は生きてる!!なのに死んだことになってるなんて…そんなことってありかよ」


大事にしたいと思っていた杏は

死んだことになってるだなんて


その事実が受け入れられなかった
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