愛は惜しみなく与う⑥
訳がわからない

杏はそんな悲しい選択肢をしてたのか?
俺たちは何も知らないで…


「東堂を正式に継いだら、杏ちゃんはもう、杏ちゃんにもどれない。志木に…もうこの財閥が潰れてもいいから…杏ちゃんを連れ出せって言ったのに」


「志木さんは……でも無事です。心配しないでください。俺が…俺が代わりに杏をここから連れ出します」


誘拐はするなと言われた
それは分かってる

ただどうにかして俺は



「杏にどうやったら会えますか?」



きっと、泣いてるから
1人で杏は泣いてしまってるだろう

1秒でも1人になる時間が減るようにと


そして俺は夜に使用人の部屋を抜け出して、志木さんに教わった、クレイジーな抜け道を通った

本来なら鍵を開けて部屋に入れたのに、杏の母親が頭おかしくなって、杏を監禁してるって聞いたから…

正面からは入れなかった


そして、屋根の上や、高いところから飛び降りたり…
手作りの縄梯子をのぼり

言われた通りに、ある部屋の窓にたどり着いて、格子を外した
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