愛は惜しみなく与う⑥
杏の落ちてきた髪をかき上げて杏の顔を見たら、我慢できなかった


絶対こんな顔、他のやつに見せてやらねー


杏は暗闇でもわかるくらい、顔が赤く、瞳も潤み、泉と…俺の名前を小さく呟いた


無理だろ

不可抗力だ

手を出す気はなかった


そんな顔されたら、な?

それに杏も、顔を近づけて、唇に触れる瞬間に、自ら目を閉じた

反則だろ
煽ってんのか?


杏はそのまま目を閉じたまま、離れなかった


ここからはもう、耐えた俺を褒めてほしい。
試されてるのかと思った

くるりと体勢を逆にしても、杏は特に何も言わない


とめれるか…わかんねー


するとパチクリと杏が瞬きした
我に返ったのか、現実に戻ってきたのか、びっくりした顔の杏は、とても可愛かった


可愛いって直接言う男の気持ちが今まで分からなかった。
機嫌取りで言ってるんだろうなって。


でも今気持ちが分かったかも

何も考えずに、ただ杏をみてると、自然と口がそう言った


可愛いなって
 

本当に思う
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