愛は惜しみなく与う⑥
中身なんて見てやらへんねん。
どーせ見てもええことないから。


「あんたの思い通りになんかならへん」


薄っぺらいメモリーチップを折り曲げた

よし。これで
見たくても見れへん
もうこのUSBの中身を知ることはない



こんなUSB、最初から無かったのと同じや


清々しくなってきたわ


なんであたしは抵抗せんかったんやろう。とりあえずこの監禁生活を終わらせな。
時間ないって言ってたくせに…
数日間無駄にしてしまったわ


部屋にある内線に手を伸ばす

この部屋から、母上の部屋に直通の電話がある。ちなみにあたしの部屋には無かったで?ここは鈴の部屋やからな

ガチャリ

『鈴ちゃんおはよう。どうしたの?朝ごはん嫌いな物でもあった?』

「いいえ、お母様。私もみんなの顔を見ながら食事がしたいです」

『…ダメよ。鈴ちゃんどこかへ行ってしまいそうだもの』

「私はどこにも行きませんよ。それともお母様は私が信用できませんか?」

『そんなことないけど…』


鈴が居なくなったあの日の夢を見るんやろうな。
< 90 / 430 >

この作品をシェア

pagetop