透明な世界で、ただひとつ。
「ねえ、堺。桜が咲いたら、その色を私に教えてね。」
私はいつか雀のさえずりを聞いていた窓を思い描く。
「もちろん、なんだって伝えるよ。
何度春が来たって、どんな季節になったって。
隣で瑞希の世界を作る手伝いさせて。」
卒業式を前に涙が溢れそうになった。
もう、二度と見れない世界が恋しくて。
私だけのこの透明なキャンバスが大切で。
隣で私の世界を紡いでくれる人がきることが幸せで。
息が苦しくなるような感覚を覚えた。