透明な世界で、ただひとつ。


「ごめん、払ってもらっちゃて。」

「気にしないで、俺が誘ったし。」

「じゃあ、今度私の行きつけのカフェ教えてあげる。」



カフェを出るともう日は沈んでいて、外はもう暗くなりはじめている。
日が短くなっているのを実感した。



「それって、また一緒に出かけてくれる感じ?」

「ちがう、カフェの場所教えるだけ。」

「ケチ。」


堺がそう口をとがされてそっぽを向くのが可笑しくて、思わず笑みが零れた。



「ケチ、って何歳の言葉よ。
今日だけって約束でしょ。」



彼は頬を膨らませていた空気を吐いて笑う。



「留学か...」

「え。あ、うん。」

「...遠いな。」

「...別になんら変わらないでしょ。」



途切れ途切れの会話をなんとか繋いでいく。



「俺、勝手にいつも畑と競ってたんだ。」

「へ?」

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