透明な世界で、ただひとつ。






「あ、瑞希!動かないでアイラインずれる!」

「え、もしかしてまばたきした?ごめんって。」



高校卒業してもう半年。

梅鶴荘の近くに引っ越してから1ヶ月が経とうとしている。



柚香は結局私についてきて、今は小さなマンションの2DKに二人暮らしだ。

濃いメイクをしてたコスメや短く切ってしまった制服のスカートを捨てて、髪も暗く染め直したそうだ。

制服のスカートは私の履いていたものをお下がりとして使っている。



毎日ドタバタしながらも2人で協力して、なんとかやっている。

こうやって柚香が私に毎日メイクをしてくれるのもルーティンになった。



「はい、完成。

あ、あとさ。今日帰ってきたらネイル変えるから。」

「え、この前やってくれたばっかじゃん。」



柚香の夢のネイリストになる練習に私の爪が使われることにも慣れてきた。

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