透明な世界で、ただひとつ。


2人で慌ててマンションを出て駅の方向へと歩く。

駅までの道のりの途中で別れるまで、2人で歩くのも日課だ。



「あ、瑞希、柚香ちゃん、おはよ。」



時々私と柚香が別れる角の所で堺に会うことがある。



「今日もランニング?」

「そ、二限からだからのんびり。

柚香ちゃん、電車の時間まずいんじゃないの?」



堺の言葉に柚香が慌てたようにスマホを探す音がする。



「は!?やば!
瑞希、そんなやつと道草食ってないで早く行くんだよ!」

「そんなふうに言ったって、数年後には瑞希は俺の嫁さんだから。」

「何それ、瑞希は私の姉ちゃんだから!

あー、もう行かなきゃじゃあね!」



柚香は慌ただしく駅の方へ走っていく。

堺と柚香の小競り合いも恒例化。

こんな幸せな生活が続くことを祈るばかり。

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