透明な世界で、ただひとつ。


その日、私は月一度の検査に行き昼過ぎに帰ってきた。

リビングには珍しく柚香がいて、柚香の寝転ぶソファの横に座った。



「最近どう?」

「フツー、瑞希は?」

「ぼちぼち。」



柚香は家ではたまに私とこうやって世間話ぐらいはしてくれる。

でも母と話してるのはもう何年も見てないし、学校では私のことは赤の他人のように挨拶すらしない。



「瑞希さ、この前堺蒼汰といたっしょ。」

「ああ、先週?」

「あの男とこれ以上関わらない方がいいよ。」



私は予想外の言葉に目を開いた。
言われても連絡先教えてとか、紹介してとかだと思ってた。



「瑞希とあの男の写真がSNS回ってる。」

「大丈夫、これ以上関わるつもりはないから。」



背中の後ろでソファが軋む音がする。

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