透明な世界で、ただひとつ。


柚香はソファから降りてキッチンに行き、麦茶を注ぐ。

久しぶりに見た柚香のすっぴんは私なんかよりずっと大人っぽくなっていた。



派手なメイク、気崩しに気崩された制服や露出の多い私服、ピアスや派手髪も、夜遊びも。

私の病気がなければ今のようにはなってなかったのかな。
いっそ、最初から見えなければ、こんな風に柚香の姿を見て傷つくことはなかったのかな。



私はそう思うと下唇のはしを噛み締めていた。

グラスが勢いよくキッチンの天板に置かれる音がして顔を上げると、柚香がこっちを眉間に皺を寄せて見ていた。



「私、やっぱ瑞希のこと嫌い。」

「え。ちょっ、なんでよ!」

「うるさい、しばらく話しかけないで!」



私の何かが気に入らなかったのか、柚香はリビングを出て上へ上がっていってしまった。

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