透明な世界で、ただひとつ。
部屋に戻ってからも勉強する気にはならなくて、何をするでもなくベッドに腰掛けクッションを抱えて西日を眺めていた。
結局、その日は筆記用具には手をつけず、意味のない時間を過ごした。
「瑞希ちゃん!これじゃあなんにも見えないでしょう!」
「そう、かもね。」
夕食に呼びに来たお母さんに言われるまで、私は一歩も動かずにいた。
何かが、たぶん視覚から入ってくる情報に感情を動かされる自分が、嫌で真っ暗で何も見えない闇の中に埋もれていたかった。
「柚香は?」
「知らないわ、あの子は自分でどうにかするんでしょ。」
その日の食卓でも私の隣のお茶碗はひっくり返されたままだった。