透明な世界で、ただひとつ。
「ねえ、先生。」
「なんだい、瑞希ちゃん。」
学校以外でのもう一人の先生。
診察がおわり、カルテに何かを書く先生に私は話しかけた。
「目がさ、見えなくなったら、何が見えるの?」
「何、が…」
私の問に先生は言葉を詰まらせる。
私の見ている世界には終わりがある。
それもかなり近くに。
いつか、私の目は見えなくなる。
「変なこと聞いてごめんね先生、もう帰るね。」
なんだっけ、先天性の網膜色素なんとか症。
漢字が並んでる名前は覚えられていない。
一応遺伝らしいけど、遺伝子の優性形質劣勢形質の関係でお母さんたちにはなくて私にだけこの病気がある。
どんどん、視界が狭まって最後には失明するらしい。
今はもう暗い中では何も見ることが出来ない。
ここ最近、病気の進行が早くて、目が見えなくなるまで秒読み。
治療法も確立されてないから、目が見えなくなることは決まっていること。