透明な世界で、ただひとつ。


翌日、週が明けて月曜日。
冷たくなりはじめた空気の中を木枯らしが吹く。
晴天で陽射しが心地いい小春日和。



数学の授業中、窓の外の裏庭に植えられた1本の大きな木を見ていた。
枝の先の1枚の葉が風に吹かれ飛ぶか飛ばないか。

そんな攻防も束の間。
枯葉は飛んでいき、葉のついていた場所にすずめがとまる。



枝の先でそこに降り注ぐ日の光を独り占めする姿が羨ましくなった。



「はい、今日はここまでー。あいさーつ。」

「きょーつけーれー」



気付けば授業は終わっていた。

先生も手についたチョークの粉を払って教室を出ていく。



「なぁ、今日この後サボんね?」

「お、いいじゃん。たまには行こうぜ。」

「何、私もまぜてよ」



いつもの派手な面々が私の席の少し前の方で集まって騒ぎ出す。

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