透明な世界で、ただひとつ。
サボる、と言っても次の時間だけ、どこかで過ごせればいい。
あの人達みたいにこのあとの授業は全部受けないなんてことはしない。
サボるにはどこがいいのかとかはわからなくて、とりあえずアニメや漫画やなんかでよく見るド定番の非常階段に向かった。
鍵はかかっておらず、簡単に外に出られた。
出てすぐの踊り場に座り込み、壁にもたれてスマホとイヤホンを取り出す。
音楽を流し始めようとした時、授業開始のチャイムが鳴った。
案外、悪いことも簡単にできてしまうんだ。
目を閉じて音楽を聞く私の頬をさっき木の葉を飛ばした風がなでる。
つめたく乾いていて、でもどこか優しいその風はとても心地いい。
「ここにいたんだ。」