透明な世界で、ただひとつ。
「ひとつ、聞いていい?」
「何。」
「どうして急にサボろうと思ったわけ。」
ジャケットのお礼に答えることにして質問の答えを考えた。
「すずめが羨ましかった。」
「え?」
「さっきの授業中、あの木に止まってたすずめがいたの。
おひさまをひとりじめしてるのいいなぁ、って。
そしたらあなたのお友達が遊びに行くっていって、なんですずめもあの人たちも自由なんだろうって思ったら、私もサボりぐらいしてみようかなってなったの。」
母を心配させないために、いつだって優等生を演じてきた。
塾にも行ってないから、授業だけは受けてないとまずいかなって欠かさずに席に座ってた。
「あれ、何の木だっけ。」
「桜でしょ。始業式とかでいっつも咲いてんじゃん。」
「そうだっけ。」
自分は思ってるより、周りのことを見てない。