透明な世界で、ただひとつ。

ジャングルジムのてっぺん



「またか。」



ここ最近、ものがなくなる。

上履き、体育着、筆箱。



また下駄箱から消えた上履きの代わりのスリッパを借りに事務室に行く。



「あらまた、畑さん?」

「いつもすいません。」



週に2回は借りに行く私のことをもう事務員さんも覚えてしまっている。



「ねえ、やっぱりいじめられてるんじゃないの。一度先生に相談した方が。」

「いいんです、上履きに足が生えてどっか散歩してるんですよ。」



そんなありえないことを言いながら貸し出し表に名前を書いて、スリッパを履く。

簡単に脱げてしまうスリッパをパタパタ言わせながら廊下を歩く。



一度教室に荷物を置きにいき、上履きを探しに行く。

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