透明な世界で、ただひとつ。
「本当は隠すだけのつもりだったけどさ、あれはなくない?」
「それね、そーたに教科書見せてもらうとかありえないんだけど。」
「てか、そーたもそーたで、あんなやつほっとけばいいのに。」
あの女子3人の話し声が聞こえてきた。
やっぱり、あの人たちは私が堺と近付くのが気に食わないわけだ。
ここで出ていって食ってかかっても仕方がなくて考えていると、池の反対側から堺が姿を見せた。
「畑の何が気に入らなくてそんなことするわけ?」
「蒼汰!?」
明らかに動揺するあの人たちと同様に私も驚いていた。
「べ、別に私たちは蒼汰のことを思って!」
「そうよ、あの畑瑞希とかっていう奴感じ悪いじゃん。
蒼汰に近付くなって教えてあげないといけないでしょ!」
とんでもない暴論だ、と思わずため息をつく。