透明な世界で、ただひとつ。
「な、何!信じらんない!私たち知らないからね!」
そう言って立ち去ろうとする彼女たちは振り返り、私の姿を見つけて固まった。
「畑瑞希...」
「あんたたち、最悪だね。」
彼女たちに向けた言葉は思った以上に低く響いた。
顔を真っ赤にした3人は急いでその場を立ち去った。
私は池の中にいる堺に近付く。
「あんたは馬鹿だよ。」
「でも、鞄はバッチリ。」
堺は馬鹿だ、本当に大馬鹿だ。
「ここ、思ったより深いのな。」
でもいいやつだ。
「教科書も鞄も、別にどうでもいいの。
ないと不便だけど、なにも堺が濡れて取るほどでもないんだから。」
私は池の横にしゃがんで、池の中で膝を着く堺の頬にとんだ泥を親指で拭った。
「ほら、保健室行こ。風邪ひくよ。」