透明な世界で、ただひとつ。
ズボンは泥だらけ、ワイシャツにも泥がとんだ堺はプールのシャワーを浴びてジャージに着替えていた。
理由も理由で、養護教諭の先生の勧めで私たちは5限目は休んで保健室。
「堺のせいでまたサボることになったじゃん。」
「え俺、畑のために池に飛び込んでも責められないといけないの?」
「だって馬鹿じゃん。」
ひど、って笑うその顔は本当に屈託のないもの。
「じゃあ、ひとつ、お礼になにかする。何がいい?」
「髪拭いて。」
「はいはい。」
私はびしょびしょの髪にタオルをのせてわしゃわしゃと拭く。
「俺、アイツらとつるむのやめる。」
「え?」
「あんな愚行にはしるような奴と友達やってらんねえもん。」
冗談かと思ったけれど、下から私を覗き込むその目に嘘は見えなかった。