透明な世界で、ただひとつ。
「でももう、教科書なんかのためにあんなことしないでよ。」
「やっぱ教科書もノートもないとダメでしょ。
畑には最後の試験でも俺と競ってくれないと困るし。」
また勝手なことを言う。
「指定校、決まったんだって?おめでとう。」
「ありがと。」
もう、指定校が決まる時期。
もうすぐ、高校生が終わるのを急に実感した。
私はカレンダーを見る。
「12月のはじめに進路決まるって他の受験生からしちゃ、いい話だよ。」
「海外行くためとはいえ指定校蹴る畑の方が贅沢だとおもうけど。」
「そう、だね。」
それ嘘。
私はもっと贅沢で、苦しい選択をしてる。
自ら塗り固めた嘘で自分を傷付けることになるとは思ってもなかった。