透明な世界で、ただひとつ。
12月ももう中旬。
明日からは高校最後の定期試験、大学に行かない私にとっては人生最後の試験でもある。
最後の授業を終えて、今日はいつも通っている海際のカフェに来ていた。
ここには高校の間毎週のように通った。
「瑞希?」
「…堺。」
突然声をかけられて振り向くと、私服姿の堺がいた。
「ほんとにいた。」
「そりゃ、行きつけって言ったからいてもおかしくないでしょ。」
堺は当たり前のようにとなりに座り、注文をして問題集を開く。
私も、堺も、受験のためじゃなくてただ試験のために勉強してる。
「何やってんだろ。」
「なに?」
「なんでもない。」
10時頃から会話もほとんどなしに黙々とシャーペンを動かしていた。