透明な世界で、ただひとつ。
冬休みに入れば、今後登校するのは始業式と卒業式予行、卒業式のみ。
多くは受験があるが、私にはそんな予定はないから、卒業後にお世話になる旅館でアルバイトをする。
私の目はいつまでものを写すことをできるかわからない。
だから今のうちから通って、建物のつくりや仕事のことを覚えることにした。
卒業後に向けた準備期間としては正しい使い方だと思う。
お世話になるのは、私の住んでいる市に隣接する観光で有名な街の旅館。
駅からも近い場所に堂々と大きな門を構えるいかにも老舗という感じ。
梅鶴荘というその旅館の中は、旅館の上品さもありつつ、自分の家のような安心感もあった。