透明な世界で、ただひとつ。
その空気感を味わいながら周りを見回していた。
「畑瑞希さんとお母様でしょうか?」
「はい、よろしくお願いします。」
「若女将の鶴田杏子と申します。ご案内しますね。」
私は旅館の奥へ通された。
バックヤードは洋室になっていて、いくつか机が並んでいた。
「瑞希さん、来てくれてありがとうね。
これから大変だと思うけど、私たちも精一杯サポートするから、少しずつなれていってね。」
「はい、ありがとうございます。」
「早速説明すると、ここが瑞希さんのデスク。
雑貨とか自由に置いてね。必要なものがあったら揃えるから伝えてちょうだい。
パソコンもボイスオーバーがあるやつ選んでるから使ってね。
お仕事は書類作成とか電話応対とか備品注文とか。
他に1人事務員さんがいるから、郵便物の仕分けとかやれないことはその人に頼ってね。」