透明な世界で、ただひとつ。
「ねえ、日誌書き終わった?」
「あぁ、あと感想欄だけ。」
隣の席の堺が声をかけてきた。
自分の机に軽く腰掛けて、私の書く文字を眺めている。
「てか、なんで待ってんの。
別に職員室に戻すのぐらい私がやっとくから帰っていいんだけど。」
「ん?このあと一緒に遊ぼうって誘おうと思ってんだけど。」
私は、思わず日誌に書き込む手を止めた。
校内ヒエラルキー最上位にいるこの男がどうして私を誘うのか、全く理解できない。
「なんで私なの。あなたの周りには腐るほどお友達がいるでしょう?
私を暇つぶしに使おうなんてしないでくれる?」
「俺は指定校の試験終わったから時間あるけど、他は勉強、塾で暇じゃないわけ。」
「じゃあ、私も受験生ですが。」
私は感想を書き上げペンを勢いよく机に叩きつけた。
彼は日誌から今度は私に視線を向けた。