透明な世界で、ただひとつ。


「堺、手握っていい?」



私は隣に立つ堺の手を握った。

その暖かさに胸をなでおろした。



ほらまた、堺は私にあたたかさをくれる。

また、私を変えてくれる。



「瑞希、好きだよ。」

「私も堺のこと好き。」



ふと言われた言葉に返答し、繋ぐ手に入れる力を強めた。



でも、私たちはわかってる。

一緒にいられる時間がもう長くはないことを。



理由は嘘をついてるけれど、私たちが隣にいることが叶わないことは私も堺も知っている。

だから、ただ今だけでも手を握っている。



それだけで幸せを感じられるから。

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