透明な世界で、ただひとつ。
「わぁ、並んでる。」
ちょっとした思いつきで、駅まで送ってもらう時の寄り道で近くの神社に行った。
「元旦だしね。」
「そりゃそっか。」
列の最後尾に着いて、その列を先頭まで目でたどった。
持ってきていた単語帳を開いて、目でさらっていた。
受験生でもなんでもないのにこんな真面目に勉強している自分が少し馬鹿馬鹿しくなったりする。
「さっむ。」
行きは車で送ってもらったのもあり、手袋をつけてきておらず何もしていない手はすぐに冷え切ってしまった。
私は単語帳をかばんに仕舞い、手に白い息をあてる。
「なに、寒いの?」
「うん、正月の気温だし。」
私が右手と左手を重ね合わせて暖をとっていると、堺がそれじゃあ、と自分の手袋を片方はずして私の右手にはめた。