透明な世界で、ただひとつ。
「え、堺も寒いでしょ。」
「だから、こうするの。」
堺は私の左手を取り、自分の右手ごとポケットに押し込んだ。
堺の体温で微かにあたたかさを持ったポケットの中で、手はやさしく重なったまま。
ちょっと逃げ出そうとした私の手はあっさり捕まって今度はぎゅっと握られる。
驚きと恥ずかしさで思わずそっぽを向いた。
体の中心が大きく脈打つのが聞こえる。
全身を血が回り冬の空気なんてものともしないほど熱を持つ。
少し時間を開けて堺の方を向くとなんてことない顔でスマホを見ていた。
私一人だけドキドキしているのがより恥ずかしくなって右手を頬のあたりに持ってくと私のものでない手袋に気付く。
私の手に合わない大きさの手袋にまた心拍数が加速する。
もう、こんなことならこなきゃよかった。