透明な世界で、ただひとつ。
「堺はなんだった?」
「大吉。事が上手く進む、望むように行うべし。だって。」
「ほらやっぱ強運じゃん。」
何となく予想通りの結果に笑ってしまった。
「恋愛は、今が善、悩むべからず、だってさ。」
「堺が悩むようなことあんの?」
「意外とあるかもよ?」
しばらく2人で互いのおみくじの結果を堪能してから紐に結びに行った。
私が空いている場所を探して結んでいるのに対して、堺はそうはせず後ろに立っていた。
「結ばないの?ってまあ大吉だしね。」
「ん?これは瑞希にあげる。」
折られたおみくじを私の手に掴ませる。
「え、せっかくの大吉なのにいいよ。」
「幸せのおすそ分けだと思って。」
私は少し金属の匂いがする手に握られたおみくじを見る。
堺は優しすぎる。
もらっても、いいのかな。