透明な世界で、ただひとつ。
帰り道も堺は私の手をとり隣を歩く。
寒さに晒されていた手はその暖かさに安心しきっている。
「来年の初詣も考えてみるね。」
その言葉を交わしたのは帰りの駅でだった。
1年後の約束なんて、したことない。
「うん、じゃあまた始業式でね。」
「ばいばい。」
私は離れていった温かさを名残惜しく感じる手を振って改札を通った。
かすかに左手に残るあたたかさを閉じ込める様に右手で包んだ。
元旦からこんなに幸せでいいのか、と幸福感を噛みしめながら電車に揺られた。