透明な世界で、ただひとつ。
「成績いい畑が指定校もらってないわけ?」
「あなたには劣るけど。」
ちゃらちゃらしたカーストトップのくせに周りの人達とは違ってなんでか成績がいいことも癪に障る。
そして、しれっと私の琴線に触れてくるのも嫌だ。
それなりに努力して、それなりの成績をとっていた私のところにも指定校の話は来た。
でも、私は病気が理由でそれを諦めざるをえなかった。
「私は留学するの。だから推薦は蹴った。」
嘘は思ったより簡単に言える。
そして簡単に人を騙せてしまう。
だから、私は自分自身を嘘で塗り固めてみる。
畑瑞希は卒業したらアメリカに留学してあっちで就職する、日本には戻らない。
こんな設定でどうよ。
「じゃあ、入学は9月だろ?試験まで結構あるんだから付き合えよ。」
もうダメだ、こいつには何も通じない。
「いいよ、今日だけね。」