透明な世界で、ただひとつ。
咲かない蕾
年が明けてから初めて通院したのは始業式の後だった。
その日は年明け前に受けた検査の追加検査で、結果を聞きに診察室に入ると先生はパソコンを見つめていた。
私が入ると先生は座りなおして私の方をしっかりと見据えた。
「瑞希ちゃん、検査の結果なんだけど。
僕の見立てだと、君の視力はもって3ヶ月だ。」
先生の言葉に指を組んでいた手に僅かに力が入った。
「あんまり、驚かないね。」
「うん、なんとなくわかってたから。」
あと3ヶ月。
いざ言われてみると、やっとかという思いの反面、少し怖かった。
いつかこの世界は見えなくなる、それが物心ついた時から私の心から離れることはなかった。
でも“いつか”が“3ヶ月後”と言われると見えなかった道が急に現れたように感じた。