透明な世界で、ただひとつ。
「あず姉、頼まれてた...みず、き?」
聞きなれた声に私は振り返ると、そこには何かを包んだ風呂敷を持って立つ堺がいた。
「あ、蒼汰。この子がこの前話してた目の病気がある...子だけど2人とも知り合い?」
梓さんの言葉なんて耳に入らなかった。
ずっと隠してた、何がなんでも知られたくなかった。
ちがう、知られてはいけなかった。
耳に入るものとは違うなにか音がする。
視力の落ちたこの目でも、私は彼のことをしっかりと認識できる。
ねえ、堺。
どうしてここにいるの。
「ごめん、あず姉。瑞希借りてく。」
堺はすぐに私の横まで来て、私の手をとり引っ張っていく。
今思い返せば色々なことが繋がる。
進路も、堺のお姉ちゃんのことも、全部。
「堺痛い。」
掴まれた手首にかかる力にそう呟くと足が止まり、堺が振り返る。
その表情は苦しげで悲しげだった。
「ねえ、病気ってどういうこと。
なんで教えてくれなかったの。」
「ごめん、」
「全部、話して。」