透明な世界で、ただひとつ。
謝ることしか出来ない私に堺は強く言う。
私と目を合わせてこっちを見据えてくる。
そのまっすぐさに思わず目をそらしてしまった。
「生まれつき、網膜色素変性症っていう病気なの。」
私は最近ようやくおぼえた病気の名前を言った。
病気の影響で視野が狭いこと、夜盲であること、日常生活に支障をきたすほど症状が進んでいること。
それから留学は嘘で卒業後はここで働くこと。
堺は途切れ途切れで上手く言葉を紡げない私の話をしっかりと聞いてくれた。
「私の視力はもう、3ヶ月はもたないって。」
その言葉の少しあと、私の体は大きなあたたかさに包まれた。
「ずっと、1人で抱えてたの?
1人でこれから見えなくなるまでも、見えなくなってからも苦しもうとしてたの?」