透明な世界で、ただひとつ。
その後、杏子さんたちの計らいで私は予定よりシフトを減らすことになった。
「瑞希、色んなところに遊び行こ。
好きな物たべて、見たいもの見て。
今だけしかできないこと、できるだけ叶えよう。」
堺はそう優しく言ってくれた。
その言葉で初めて今したいことを考えた。
水族館に行きたい、スカイツリーに行きたい、スケートがしたい、買い物がしたい、他にもたくさん思い浮かんだ。
その日以降はバイトか堺と遊びに出かけるかの日がつづいた。
一方で、視力が失われるその日への準備も1人着々と進めていた。
そんな私を母は泣きながら止める。
母は私の目が見えなくなることを受け入れられていないんだと思う。
きっと堺がいなければ、私も受け入れられないままその日を迎えただろう。