透明な世界で、ただひとつ。
「瑞希、次はどこ行きたい?」
「んー、野球見に行きたいかも。」
「え、急じゃん。チケット取れるかな。」
堺は私のわがままも叶えてくれる。
絶対無理だって思うことを冗談で言ってみても、彼はいいよと言う。
彼のいいよの声を聞くと、彼はなんでも叶えてくれるのではないかと錯覚してしまう。
あたりまえに繋がれた手が、ぼやける視界の不安から解放してくれる。
手を繋いでいても、元日以来、好きと言われることもないし、付き合おうとも言われてない。
この関係をなんと呼ぶのかは知らないけれど、それに満足している反面、堺のあたたかさを今以上に求める自分もいた。
「4日はどうする?」
「堺の行きたい場所にして。」
「え、誕生日なのに?」
2月4日、私の誕生日。
色々考えたけど、今度は堺の行きたい所かなと思った。