透明な世界で、ただひとつ。
控えめな甘さで包んで
堺に連れられやってきたのは、ファンシーなカフェ。いかにもSNS映えしそうだ。
私がケーキを食べる目の前で彼は大きなパフェを食べている。
「見てるこっちが胃もたれしそうなんだけど。」
「甘いものは脳にもいいんだから、気にするな。」
「それは、適度な糖分でしょ。あなたの食べてるのは過多だと思うんですが。」
私は大きなパフェカップにのった生クリームから目を背けた。
口の中をどろどろと甘くするあの感覚は何度経験しても気持ちいいものじゃない。
「いいの、甘いのが好きだから。」
「やっぱ私たち合わないみたい。」
甘さ控えめなベイクドチーズケーキを舌で押しつぶすように食べた。
ほろほろと崩れ、かすかな甘味が自然と消えていく。
これくらいがちょうどいい。