透明な世界で、ただひとつ。


「大丈夫、少しずつ慣れていけば。」



堺はそう言ってサンドイッチを口にし、口元のソースを拭うように手が口元に寄せていた。



「またボーリング行きたいな。」

「またいつか行こっか。
でも瑞希他に行きたいところないの?」



堺にそう聞かれてはたと考える。



「スキーとか?」

「それは難しくない?」

「わかってるって。」



こうやって冗談が言えるぐらい明るくいられる。
これがどれだけ嬉しいことか...

視力がこれだけおちても笑っていられていることを、目が見えなくなることに絶望していた頃の私に伝えたい。



「ご馳走様でした。」



私がそう手を合わせて言うと、堺はくすっと笑って私の手におしぼりを持たせた。



「拭いときな、口の周り赤くなってる。」

「ありがと。」



私が言われたように口の周りを吹くと手元の白は赤くなった。

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