透明な世界で、ただひとつ。
「瑞希、これ。」
「ん?」
私の笑いが収まると、堺は鞄の中から白い袋を出てきた。
「プレゼント。」
「開けていい?」
「どうぞ。」
私はおそるおそる袋の中に手を伸ばし、中から小さな箱を取り出した。
箱を開けると小さな指環が目に入った。
「そんなに高いものじゃないけど、俺の気持ちをしっかり瑞希に伝えたかったから。」
堺は私の隣から正面に移動してしゃがみ、私の目を見上げた。
「瑞希、好きです。俺と付き合ってください。」
「はい、もちろんです。私も堺が大好きです。」
私は堺の瞳を遠くに見据え、一語一語しっかり口にした。
手に温もりを求めて、堺の頬に手を伸ばした。
「ねえ、はめてくれない?」
私がそう言って笑うと堺は私が伸ばした右手をとり、薬指に指輪をすっとはめてくれた。