透明な世界で、ただひとつ。
「瑞希。」
「なあに。」
「生まれてきてくれて、ありがとう。」
堺の言葉で隠そうとした涙が隠しきれなくなった。
「、っこちらこそ、出会ってくれて、ありがとう。」
嗚咽紛れのその言葉に堺は私の背中をさする。
「瑞希っていう名前の由来って話したっけ。」
「ううん、知らない。」
涙がようやく収まった私は話をはじめた。
「瑞希の一文字目ってズイって読むんだけど、おめでたいことのしるしっていう意味があるんだって。
ほら、瑞雲とかっていうでしょ?その瑞。
誕生日が2月4日の立春じゃない?
だから春の訪れ、希望のしるしっていう意味でつけたんだって。
...でもさ。私は希望のしるしなんて感じじゃ、そんな素敵なものじゃないし。」
むしろ私にとっての希望のしるしは堺だ。