透明な世界で、ただひとつ。


「俺には希望のそういう概念的なものはわからないけど、少なからず俺は瑞希が隣にいてくれれば頑張れるよ。

それじゃあ、たりない?」

「ううん、ありがとう。」



私は欲張りだ。

よくある映画のセリフの“あなたがいれば他に何もいらない”なんていう綺麗事は言えない。



堺に隣にいてほしいし、ずっとこの目でこの世界を見ていたいし、大学にだって行きたいし。

もっというなら、友達だってほしい、柚香と仲良くしていたいし、約束された将来なんていうのもほしい。

もっともっと、ほしいものがたくさんあるけど。



でも、もし、ひとつ望むのだったら。

どうか神様、仏様。
繋がれたこの手を引き裂くようなことだけはしないでください。

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