透明な世界で、ただひとつ。


「もう暗くなるし、帰ろっか。」



堺は立ち上がり私の手をひく。



右手薬指にはめられた指輪のディティールをこの目で見ることはできない。

でもそこに込められた思いを感じることはできるよね?



「いつか、左手にもっといいものはめさせてあげる。」

「え?それって告白?プロポーズ?」

「ずっと一緒にいてっていうおねがい。」



私はその言葉に思わず吹き出す。



「いつか、ウエディングドレス着させてよね。」

「プロポーズですか?」

「ずっと隣にいるよってやくそく。」



永遠の愛とかなんとか言うには幼すぎる私たちと私たちの繋がり。

おねがい。やくそく。



それで十分。



「白杖にウエディングドレスじゃ白すぎるかな?」

「いや、統一感あっていいじゃん。」



そんなことをいいながら、大きなオレンジにむかって歩いていく。

< 94 / 115 >

この作品をシェア

pagetop