透明な世界で、ただひとつ。
私がその言葉に返せずに黙っていると、柚香はもう一度言葉を紡ぐ。
「いや、ちがう。
私が、私が瑞希から目を背けてたんだよ。」
そう言って涙を流す柚香の背にそっと手を回す。
「柚香、中で話そう。手、引いてくれる?」
私がそう言うと、柚香は私の左手を取り彼女の右肩に置かせた。
そうして私を中に連れる動作があまりにも自然で、私は思わず驚いてしまった。
「瑞希の部屋でいい?」
階段も丁寧に案内してくれた柚香はそう聞いた。
私はそのまま私の部屋に案内してもらい、ベッドに腰掛けた。
「私、ついさっき瑞希の目の具合知ったの。
今日瑞希の誕生日だから、プレゼント買ってきたから渡そうって。
部屋行ったら、教科書も文庫本もなくなってるし、部屋の色んなものに点字が貼ってあって...
あの人に聞いて初めて知った。」