花屋敷の主人は蛍に恋をする
「今日は………いえ、今回は本当にありがとうございました。樹さんには何度お礼を伝えても足りないほど感謝しています」
樹が注文したコース料理は、季節の野菜をふんだんに使ったもので、彩りも綺麗で菊那の心も舌も楽しませてくれた。そんな料理を堪能しながら、菊那は1度フォークを置いて、樹にそうお礼を伝えた。
「菊那さん、あまり気にしないでください。ずっと心の中にあった苦しいものから解放されたのですから。喜ばしい事です。日葵さんと私が知り合いになったのは、あなたのためだったのかもしれませんね。それほどに偶然が重なった出来事でした」
「そうですね………。本当に、樹さんが日葵くんと知り合いだったなんて……でも、名前を聞いただけですぐに思い出してもらえてよかったです」
「向日葵好きの日葵といったら、彼しかいないでしょう」
「確かに、そうですね」
菊那と樹はクスクス笑い合った。
シャンパンを頂きながら、菊那はちらりと樹を見つめた。彼が食事をするする姿はとても様になっており、見ているだけでうっとりとしてしまうものだった。