花屋敷の主人は蛍に恋をする



 「日葵さんにも刺繍したものをプレゼントするのですか?」
 「え、はい。日葵くんの絵と交換しようと約束したんです。今から楽しみです」
 「なるほど………では、私にも何か作ってくれませんか?私があげられるものは……何もないので制作費はしっかり渡しますので」
 「そ、そんな!!いただけません!ここまで連れてきていただいたし、ホテルや料理のだって樹さんが払ってしまったじゃないですか。それぐらい、私にさせてください」


 菊那が起きてから支度をした後に、こっそりとフロントに電話をしてお会計をしに行くと伝えると、「すでにお支払済みとなっています。レストランの方もメニューは注文されているので、こちらでお支払いしていただくものはございません」と、言われてしまったのだ。
 

 「………だめですか?」
 「いえ、とても嬉しいです。プレゼント楽しみにしていますね。あぁ、でも花の刺繍を持っていたらさすがに似合いかもしれませんね」
 「そんな事ないです!とても、似合うと思います」


 思わず大きめな声が出てしまい、菊那は次第に音量を下げながらそう言う。
 自分の作ったものを持っていて欲しい、という気持ちもあるが、樹が持っていたら更に素敵に見えるのではないか、と想像するだけで楽しみになってしまう。
 これは早く作らないといけない!と、心の中で意気込んでしまう。




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