花屋敷の主人は蛍に恋をする
「………一緒に寝てくれるんじゃないですか?私は樹さんと一緒に寝られると思って、同じ部屋でもいいと言ったんです。………樹さんは、違ったんですか?」
「………菊那さん」
ソファに座る菊那の前に立っていた樹は驚いた顔で菊那を見ていた。菊那は自分の言葉に驚いたものの、もう止める事はできないのだ。ペットボトルを強く握りしめたまま、顔を俯けてしまう。
自分からそんな事を言ってしまうなんて、とても恥ずかしかった。樹が気になる人だから、一緒に居たいと思う人だからそう思うのだと伝えなければ。誰でもそんな事をいう人だと勘違いされてしまうかもしれない。そう思うのに、もう菊那は自分から声が出せないぐらいに、緊張から体が硬直してしまっていた。
けれど、そんなカチカチになった体は意図も簡単に動いてしまう。
樹がゆっくりと動いてこちらに近づいてきたのがわかったが、その後の事は急すぎて何が起こったのかわからなかった。
「………え………」
気づけば、天井を背景にした樹の顔が目の前にあったのだ。そして、その彼の顔は今までみたものとは全く違う。見たこともないものだった。
瞳は鋭く、奥からギラギラとした熱を持った視線。吐息も近く、そして熱い。いつもは温厚で紳士的だが、今の雰囲気は男の男の色気が出ている。そんな彼に見つめられれば、菊那の体もお酒を飲んだ時以上に熱くなってしまう。
菊那は樹にソファに押し倒されており、樹はそのまま樹の体の上に跨がり、そしてゆっくりと頬に触れた。