花屋敷の主人は蛍に恋をする
「………前に言いましたよね。私も男だ、と」
「樹さん………」
「少しは考えませんでしたか?予約をした時に間違えではなく、わざとシングルの部屋ではなくダブルの部屋を予約したのでは……と」
「ぇ…………」
「そうでないと、部屋を1つと2つを間違えるなどなかなかないと思いませんか?」
フッと笑った微笑みは、どこまでも楽しそうで、菊那は背筋がぞくりとした。そのため、樹が話している内容を理解するのに時間がかかってしまった。
部屋を間違えてとったのではなく、意図的にその部屋をとった、と彼は言っているのだ。
「………私は、あなたを気になっています。それも、あなたにお伝えした事です」
その言葉が終わらないうちに、樹の顔はゆっくりと近づき、彼の熱っぽい唇が、菊那な唇へと落とされたのだった。