花屋敷の主人は蛍に恋をする



 「菊那さん、作って欲しいという訳で言うのではないのですが……この屋敷で作ってくれてもいいんですよ?」
 「え……でも、その………実は私も料理が得意ではないので、手際が悪かったり、失敗してしまうのは見られたくないので……上手くなったらお借りしますね」
 「わかりました。それまでに菊那さんに似合うエプロンを準備しておきましょう」
 「それは楽しみです!」


 菊那は思わず声を上げてそう言うと、「どんなのが似合うと思いますかー?」などと、隣に座る樹を見ながらはしゃいでしまう。
 すると、樹は菊那の方に手を伸ばすと菊那の首の後ろに腕を回し、引き寄せると菊那にキスをした。食事中に、そんな事をされるとは思わずに菊那はすぐに赤くなってしまう。


 「んー………トマトの甘い味がしますね」
 「………樹さん、食事中にこんな事するなんて………」
 「可愛らしくてつい……ダメですか?」
 「………ダメっていいたいけど………ダメじゃないです」
 「それでは、お許しが出たのでもう一度………」


 樹の甘いキスが菊那の食事になってしまうのか。キスをすると、満たされテイクのを感じ、お腹がいっぱいになりそうだな、なんて思ってしまう。



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